週刊文春2014年8月28日号掲載の立花隆「私の読書日記」に、書評を掲載していただきました。
「「近江、鉄、渡来人をめぐって」の副題を持つ『豊臣秀吉の系図学』が、奇妙に面白い」という書き出しで、
以下のようなことが書かれています。ポイントを紹介させていただきます。
「豊臣秀吉の父方の家系はいまにいたるも不明ながら、母方の系譜は国立国会図書館古典籍資料室に収蔵されている諸系譜の中の「太閤母公系」なる系図に、応神天皇の時代に朝鮮半島からわたってきた刀鍛冶、佐波多村主の一族の系譜に属すとの記載がある。系図の世界は、古来真偽不明の怪しげな情報が沢山入り混じっていることで知られる世界だから、にわかに信じ難い話がいろいろ出てくるが、滋賀県長浜市の鍛冶集落では、昔から秀吉が鍛冶屋の神として祀られていたなどの史実もある。
これらの情報の周辺を深掘りしていくと、ホホウ、ナルホドと思われるさまざまの史実と伝説伝承が次から次に出てくる。どこまで何を信じたらよいのか、抑制のきいた宝賀の筆(史実として怪しい部分は怪しいとキチンと書きわけている)と蒲池の現地補足取材の面白さに引き入れられて、ついつい読んでしまった。歴史の面白さと妖しさに魅了される一書。自分でも調べたい人に資料へのアプローチの仕方が詳しく出ているのがよい。大半がネットで調べられる」